08/20(金)
【公演特集記事】 曽根麻矢子が挑む日本人初のプロジェクト、いよいよ開始!
曽根教授より特別メッセージを頂きました!
ここに、もう一つのクープラン・ルネサンスが――
最近、フランスの名手ヴェルレの全曲CD録音盤が話題を呼びました。
日本の名花は曽根麻矢子。
曽根が 250 曲に及ぶクープランの全作品演奏に挑みます。
これは日本人初の挑戦。
しかも、ラモ―のクラヴサン全曲(約 50 曲)も加わる類のない企画で、
この秋から 4 年にわたる全12回のマラソン・コンサートです。
クープラン作品独特のタイトルの魅力――あでやかな貴婦人の肖像、謎めいたポエジー、
ユーモラスな人物や自然の模倣、小屋掛け芝居風 etc. ――
その小宇宙を木の香るサロン(上野学園 エオリアンホール)で心ゆくまで味わう極上のひととき。
是非、お聴き逃しなく!
曽根麻矢子 クープラン&ラモー クラヴサン作品全曲シリーズ
監修: 船山信子(上野学園 石橋メモリアルホール館長/上野学園大学教授)
2010年10月9日(土)14:00開演 【上野学園 エオリアンホール】 第1回≪ブルボン家の王女たちの肖像(ポルトレ)――王妃マリ≫
2010年12月4日(土)14:00開演 【上野学園 エオリアンホール】 第2回≪ヴェルサイユの迷宮庭園――神秘な障壁≫
※第2回終演後、特別シンポジウム開催(司会:船山信子館長)
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曽根麻矢子教授より特別メッセージを頂きました!
2010年2月の「音開き」の様子や、今秋から始まる全曲シリーズにへの意気込みを伺いました。
エオリアンホール「音開き」、その感動的瞬間を経験させていだきました!
出来たてのホールで、初めて楽器が、チェンバロの音が鳴る。
その響きを待つ人に、ふわーっと音を投げこむ様な、あの特殊な「時」・・・
きっと一生忘れないでしょう。
とても小さくて親密な空間。
これほどチェンバロに適した大きさのホールを他に知りません。
宮廷楽器だったチェンバロにとって、とても贅沢な場所ですね。
この楽器は、その音の振動が、床から直接身体に伝わる位の距離で聴くことが理想と思っています。
その距離でこそ伝わる「何か」というのが、実はとても大切に思えるのです。
どんなに素晴らしい響きを持つホールでも、これを実現することはかなり難しいですよね。
奏者と聴者の間に「何か」が沢山こぼれ落ちて届けられないもどかしさは、
現代のコンサートホールで演奏するチェンバリストの避けて通れない辛さです。
もちろんそんな辛さは表には出しません(今、ばらしてしまいましたが)。
さて、 今から何十年前でしょう!?
以前の石橋メモリアルホールで、F. クープランのオルドルの生演奏を聴いたことを思い出しました。
有田千代子女史による雄弁な演奏は、「一生かかってもあのようには弾けない」と感激したものでした。
その時の「エオリアンで同じ演奏を聴いてみたい!」という気持ちも覚えています。
昨年までに12回のバッハ・リサイタルシリーズを終え、エネルギーを使い果たしたと共に沢山のことを学んだ曽根麻矢子は、この新しくなったエオリアンホールで、夢のプログラムを実現させる運びとなりました。
バッハを弾いている時は、チェンバロという楽器を弾いている実感がないというか、
楽器なんて何でもよくて、ただその音楽が素晴らしい!という実感の方が強いというのが正直なところです。
が、これからお聴きいただくフランソワ・クープランは、正にクラヴサン(仏語でチェンバロのことです)のための音楽であり、この楽器の魅力をあますことなく引き出す魔法を持っています。
自分が「酔える」実感があるので、「もしかしたら、こういう種類の音楽は、演奏している本人が一番堪能できるのではないか?」という本音を隠せません。
そんな酔いしれた音を聴いていただくのも忍びないですが、これはもう、是非ともお聴きください。
「身体の一部に見える」と最近よく言われる自分の楽器を持ち込ませていただき、
とことん深い世界へおちていく覚悟です。
あ、ラモー君のこともよろしくお願いします。
クープランとは対照的で、オペラチックな曲をクラヴサン用にも書いた、わかりやすい男子ですよ。
曽根麻矢子
2010年8月