06/21(木)
エクス=アン=プロヴァンス音楽祭監督
フォックルール氏講演会開催
2007年よりフランスのエクス=アン=プロヴァンス国際歌劇芸術祭の監督を務めているベルナール・フォックルール氏が来日され、2012年2月22日(水)、上野学園大学音楽文化研究センターの主催で、同学園エオリアンホールにて講演会が開かれました[通訳:樅山智子氏]。
フォックルール氏は1992年より2007年まで、ベルギー王立モネ劇場の総監督を務めたが、もともとはオルガニストとして活躍し、古楽グループとの活動の経験も豊富という、オペラ界では異色の存在です。
講演タイトルは、「芸術教育プログラムはなぜ必要か?」。エクス=アン=プロヴァンス音楽祭が開催されるのは、夏の3週間だが、このたった3週間のために、2ヶ月のリハーサルと6ヶ月の芸術教育プログラムが組まれており、現在、この芸術教育プログラムが世界的に注目されています。今回の講演では、ヘンデルの《アチスとガラテア》、モーツァルトの《ティト帝の慈悲》、ショスタコヴィッチの《鼻》など、10作品あまりの舞台写真や、ワークショップの現場のスライドを交え、プログラムの理念、全体像、成果、問題点などが語られました。
この芸術教育プログラムでは、「創造性」と「コミュニケーション」を二つの大きな柱にして、実に多様なプログラムが組まれている。作品そのものの紹介や、オーケストラのメンバーによる啓蒙的な演奏会は勿論のこと、観客自身が演出や舞台装置のオブジェの制作に関わっていくことも試みられています。この根底にあるのは、観客の質が公演の質を左右するという経験からくる、「観客は作品の外にいるのではない」というフォックルール氏の強い信念でした。
急遽開催が決定されたにも関わらず、会場には、日本の劇場やホール、音楽団体などで働くスタッフ、研究者が多数集まり、講演後には、30分あまりに渡り熱い質疑応答が交わされました。その中でもとても印象的だったのは、フォックルール氏の次の発言でした。
「この教育プログラムは、子供たちが将来音楽愛好家になってほしいからやっているのではありません。無論そうなってくれると嬉しいのですが、私は『未来の聴衆』をつくるためではなく、やはり『今日の観客』のために活動しているのです」